硫黄島の星条旗 (文春文庫)

映画 父親たちの星条旗 (特別版) [DVD] の原作である Flags of Our Fathers (Movie Tie-in Edition) の翻訳版。最近、別バージョンの書籍(父親たちの星条旗)も出たようだが、内容が同じかどうかは知らない。
第二次世界大戦での最大の激戦の一つである硫黄島の戦いで、島の摺鉢山頂上に星条旗を掲げた米海兵隊員を中心に、その関係者や、その戦場に居た人達の生き様を丁寧に語っている。著者は、摺鉢山の星条旗の写真に写った衛生兵の息子さんで、日本留学の経験もある。
この戦闘に敗れた日本軍は、膨大な死者を出したのだが(生存者は数%)、勝った米軍もこんなに大くの死傷者を出したとは知らなかった。特に、星条旗を掲げた兵達が属していたイージー中隊の死傷者はとんでもない比率だった。著者の父親の友軍兵が戦場で次々と倒れていく様が淡々と描かれているのに、胸が詰った。
そして、この本は、個々の海兵隊員が友軍のために取った行動は肯定しているが、決っして戦闘そのものを肯定していない。
原作の書名にある flags という複数形は、この戦闘の最中に摺鉢山に揚げられた複数の国旗と、戦時国債のために米国内で摺鉢山を模して揚げられたたくさんの国旗との表わしているのだろうか。

硫黄島の星条旗 (文春文庫)

硫黄島の星条旗 (文春文庫)