主人公はマイク

2週間前に聴き始めたAudible、The Moon Is a Harsh Mistressを聴き終わった。聴くだけじゃ、20%くらいしかわかんない。でも、大昔に何度も読んだ月は無慈悲な夜の女王を思い出しながら聴いた。
ネタバレになるので、一応、激しく、改行しておく。




























無茶苦茶頭が良い子供のような自意識を持つようになった月面政府のコンピューターのマイクが、その自意識に初めて気づいた技術者のマニーを友にし、その友とともに独立戦争を始め、青年にように成長し、自分の見落としを恥じるようになり、人の死に自責の念を覚えるようになり、リスクヘッジのために友を遠くへ行かせ、勝利を得る直前に攻撃目標になって破壊され、完全に修理されて友に話しかけられても自意識を取り戻さなかった…そんな、お話。
マニーが交渉のために地球に渡った中盤あたり、マイクの出番が減って中だるみ感があったけど、月に地球の揚陸艦が到着した後の展開はすさまじい。多くの犠牲者を出しながら揚陸艦を撃退し、地球への反撃を始める。そして、意図と反して地球の多くの一般人を死に追いやり、それが独立政府内で問題なり、それでも、反撃を続ける。地球もなけなしの戦艦を投入し、月都市を爆撃。度重なる爆撃のためにマイクとの連絡が途絶したマニーが、限られた情報を元に、残り少ない攻撃資源の投入方法を迷いまくる。結局、強気に攻め続けることを選んだマニーは、地球の戦艦に発見されないためにレーダー使用を抑制し、足りない分は目視監視で補い、地球への攻撃を続け、やっとのことで勝利する。
しかし、勝利の代償は大きかった。独立戦争を始めた最初の4人のうちの1人は市民への勝利の報告中に息を引き取り、1人(マイク)は自意識のない普通のコンピューターになってしまった。そして、やっとのことで独立を得た月政府は、つまらん法律で人を縛り、税金で要らん世話を焼く『大きな政府』へと変わっていった。
マイクがマニーを離れた場所に行かせたのって、もちろん、戦争遂行が主目的なんだろうけど、自分が攻撃される時に友を巻き込みたくない気持ちがあったんでないかな…とか思ったり。
で、爆撃を受けたせいでマニーとマイクとの連絡が取れなくなったあたりで、聴いてるこっちはマイクの死がわかってるわけで、泣きながら聴いてたりした。そんな中で物語の語り手のマニーは、「できることから、やらなきゃ」みたいな感じで、必死感を漂わせながら攻撃の指揮を取ってるわけで、それがまた泣かせるんだよね。
あと、私が無政府主義的傾向があるのは(ってか、他人に迷惑をかけないことを良かれと思って法律で規制する人が嫌いなこと)、この小説に多大な影響を受けてると思われ。
聴くのも読むのも超お勧め。翻訳が割とアレなので、読める人は、原書でがんばった方が良いかも。

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)

The Moon Is a Harsh Mistress

The Moon Is a Harsh Mistress